October 13, 2018
【BOOK】フェア『柴崎友香の本棚』【本のうら表紙#10】
【本のうら表紙#10】
『公園へ行かないか?火曜日に』(新潮社)
『つかのまのこと』(KADOKAWA)刊行記念
『柴崎友香の本棚』
スタートしました!
『つかのまのこと』(KADOKAWA)は8月末に発売!
当店にも入荷済みです。
『公園へ行かないか?火曜日に』(新潮社)
『つかのまのこと』(KADOKAWA)刊行記念
『柴崎友香の本棚』
スタートしました!
『つかのまのこと』(KADOKAWA)は8月末に発売!
当店にも入荷済みです。
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こんにちは。書籍担当のさとうです。
みなさまいかがお過ごしでしょうか?
各地域で猛暑日が続きうだるような暑さですが、それでもなお夕暮れ時は毎年同じような夏空で、なんだか少しほっとします。
追記を書いている今は9/9。
鈴虫も鳴き始め、時折涼しい風が吹くようになりました。
最後の追記を書いているのは10月26日。昨日は満月でした。
さて本日は8/1よりスタートした本棚企画第二弾『柴崎友香の本棚』をご紹介したいと思います。
まずはこのフェアの主役、柴崎友香さんのご紹介をさせてください。
「柴崎友香ってどんなひと?」柴崎友香|tomoka SHIBASAKI
1973年大阪府生まれ。2000年に刊行されたデビュー作『きょうのできごと』が行定勲監督により映画化され話題となる。2007年『その街の今は』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞、2010年『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞、2014年に『春の庭』で芥川賞を受賞。小説作品に『ビリジアン』『パノララ』『わたしがいなかった街で』『週末カミング』『千の扉』、エッセイに『よう知らんけど日記』『よそ見津々』など著書多数。7月末に『公園へ行かないか?火曜日に』(新潮社)を刊行。8月末には『つかのまのこと』(KADOKAWA)を刊行予定。
柴崎友香オフィシャルサイト→
公式Twitter→
9月公開予定『寝ても覚めても』公式HP→
『寝ても覚めても』公式Twitter→
当店では何度もイベントにお越しいただいています。
『かわうそ堀怪談見習い』刊行記念 柴崎友香トークショー&サイン会
『きょうのできごと、十年後』(河出書房新社)刊行記念 柴崎友香さん朗読&トーク&サイン会in大阪
『わたしがいなかった街で』刊行記念 柴崎友香 キャンドルナイト朗読会&特別対談
======================================
『本棚企画について』
このフェアは「選書フェアなぁ…もっと面白い形でできひんかなぁ。」というぼやきからはじまりました。
ほんの少しの違いでも、いままでと違うことができたなら、開催する側も、来て下さるお客様も、いまよりほんの少しだけ楽しめるようになるのではと、漠然と考えていたのです。
そんな時アイデアとして浮かんだのが「作家さんの本棚を再現する」でした。
作家さんは、どんな本を読んでいるんだろう?
どんな本を読んできたんだろう?
どんな本を大切にして、どんな本に影響を受けてきたんだろう?
その本たちを並べてみると、インタビューをするより、もしかしたら作家さんのことが知れるかもしれない。
第一弾として昨年『滝口悠生の本棚』を開催したのですが、フェアの終盤になると「第二弾も開催できるといいな。そして次に開催するなら柴崎友香さんがいいな。」と考えていたのです。
少し時間が経った頃、柴崎さんから「たくさん本が出ますー」とご連絡いただいたので、この刊行が続く時期にそれぞれの本を本棚企画でゆるやかにつないでいきたい。
『きょうのできごと』、『きょうのできごと、十年後』増補新版、『寝ても覚めても』(全て河出書房新社)、『 公園へ行かないか?火曜日に』(新潮社)、『つかのまのこと』(KADOKAWA)。
上記5点の刊行ラッシュ、そして『寝ても覚めても』の映画公開を9月に控えた今、柴崎友香さんをより多くの方に知っていただけたなら。
今回も柴崎友香さんに全面的にご協力頂き、実際に家にある本棚の写真撮影(こちらは実際にコーナーに貼り出しています。)、手描きPOP、選書、そしてフェアに際しての『寄せることば』までいただきました。
本棚の詳しいラインナップに関しましては、少しずつツイッターで告知していきますね。(随時こちらでも更新予定。)
本棚の総冊数は約40冊。
今回も柴崎友香さんの蔵書をお借りしているものもあります。
こちらはご購入いただくことは出来ませんが、絶版の本など大変貴重なものもございますので、ぜひこの機会に手にとってみてください。
貼り出しているPOPはすべて柴崎友香さんの手書き。
フェアも折り返し地点まで来ました。 (18.9.9現在)
ツイッターでアップしていたものをこちらにも掲載しますので、改めてフェア内容を一緒に振り返っていただけるとうれしいです。
さらに追加しました。(18.10.26現在)オレンジの文字は柴崎さんが補足してくださった分です。
柴田元幸訳 レアード・ハント『ネバーホーム』。 「小説は誰かの心の内を語れるのやろうか、小説を読む人はいったい誰の言葉を聞いているのやろうか。とつとつと語られる小さな声に耳を澄まし続け、たどり続けた先に待ちうけていた誰かの人生に、衝撃を受けずにはいられませんでした。」
吉田健一『東京の昔』。 「都市を書くこと、場所を書くことについて、これや!この感じやん!と読むのがひたすら楽しい大好きな小説。″ここ″があるから″そこ″がある。どこでもないどこかもここではないどこかもなくて、そこへ行けばそこがここになるのだ。」
田中小実昌『ポロポロ』。 「戦争やめとこうよ、とこれ以上に思う本はないかも。人の存在にうまく理由をつけて“物語”にしてしまうことを徹底的に拒否する。実際の経験や実在の人を書くことはどういうことか、その厳しさを教えてくれる、何度も読み返している一冊です。」
野坂昭如『火垂るの墓・アメリカひじき』。 「映画はみんな知ってても原作を読んだ人は少ないのでは。戦争のなかと、戦争がおわったあと。誰が、何が、どう間違ったのか、曖昧にされたまま進んできた社会の矛盾と、そのしわ寄せは、今に至るまで続いていると思わずにはいられません。」
レイモン・クノー『文体練習』。 「おもろすぎるわー、というか、この人、めっちゃ頭ええな!と何回読んでも楽しい。文章を書きたいと思うのは、このときめきがあるからや!」
オギュスタン・ベルク『風土の日本』。 「“風景とは自然と人間との関係”と言うベルクに、大学で人文地理学を勉強していて最も影響を受けました。自然環境から人間は多大な影響を受けるし、風景や文化を見ればそこに暮らす人の内面が見えてくる。わたしは小説で風景そのものをずっと書いていくと思います。」
サン・テグジュペリ『人間の土地』。 「“人間であるということは、とりもなおさず責任を持つことだ。人間であるということは、自分には関係ないと思われるような不幸な出来事に対して忸怩たることだ。”生きることを支えてくれる言葉がたくさん詰まった本です。堀口大學の訳がすばらしい。解説は宮崎駿で飛行機マニアぶりを発揮。」
ヴィスワヴァ・シンボルスカ『終わりと始まり』。 「『きょうのできごと』の映画化のときに、行定さんから“ひとめぼれ”の詩をおくってもらって以来、何度も読み返しています。平明な言葉で、人間の存在も、愛も、歴史も戦争の残酷さと責任も、詩はこうして語ることができる。」
中井久夫『災害がほんとうに襲った時』。 「精神科医として勤務していた神戸の病院で阪神淡路大震災が起こった時の記録。忘れないために、これからのために。中井久夫さんの考えることや言葉は、人の心の複雑さ、壊れやすさと、人の存在をほんとうに思いやることを考えさせてくれます。ちくま学芸文庫のシリーズも是非読んでほしい。」
イー・フー・トゥアン『空間の経験』。 「わたしたちは空間を、場所を、どのように経験するか。古今東西の例を行き来しつつ、身体、認識から、地理、建築、思想に連なっていく、読んでいてとても楽しい本。同じ著者の『トポフィリア(場所愛)』も名作です!!」
「スタンダードブックストア心斎橋で開催中の『柴崎友香の本棚』でいちばん売れてるのは意外にも?イーフー・トゥアン『空間の経験』なのですが、ちくま学芸文庫から今月出た(原著は1982年)『個人空間の誕生』もとてもおもしろそう。トゥアンは『トポフィリア』も必読です。」 「ちくま学芸文庫は、地理、場所、空間、建築系のいい本がたくさんあるよね。」
フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』。 「何が妄想で現実か、何が真実でまがいものか、今の世界はますますディック的になっていて、ディックの小説に書き続けられている、人間であることのかなしみ、それでも人間に踏みとどまろうとするかなしみに、何度読んでも胸を打たれます。何度も泣いてしまって、なかなか読めない。」
夏目漱石『草枕』。
「小説に書かれている場所や風景を、“舞台”“背景”などと言ったりしますが、『草枕』を読めば、人の話も場所も思想もひと続きの線上に語られているのがわかります。一冊丸ごと書き写したいくらい好きな小説。ようかんやサボテンの表現が超かわいい。声に出して読むのも楽しい小説です。」
ジェニファー・イーガン『ならずものがやってくる』。 「人生は多くの場合、自分が期待した通りにはならない。夢はついえ、愛は失われる中で、人は自分や世界をどう受け入れるのか。ダメな人がたくさん出てくるとても愛しい小説。音楽小説でもあります。それにしてもわたしは、複数の視点と時間が平行して進む小説がすきやなぁ。」
川崎徹『あなたが子供だった頃、わたしはもう大人だった』。 「ずっと会っていない人が、だいぶ前に死んでいたことを知ったとき、知らなかった時間は、その人は自分の中で生きていたことになるだろうか。川崎徹さんの時間の感じ方には勝手に近いものを感じています。死者の記憶と共に生きること、それを書く小説。」
デニス・ジョンソン『ジーザス・サン』。 「小説を書いていくわたしを、救ってくれたのはこの本です。こんな小説を書きたい、とずっと思っています。この小説に出会えなければ、書けなくなっていたかもしれない。今は入手困難なのがとても残念ですが、来年新しい本が出るようなのでそれを待っています。」
『ニューヨークストーリー ルー・リード詩集』。 「引っ越しのたびにどっかいってないかまっ先に確認する大切な1冊。“きみの鏡になろう”“ペイル・ブルー・アイズ” “ヘロイン”…の詩の言葉にずっと救われてきました。欄外のエピソードや、アンディ・ウォーホルに対する思いも、冷戦終結直後のチェコのハベル大統領へのインタビューもとてもいいです。」
加藤典洋『世界をわからないものに育てること』。「『わたしがいなかった街で』の詳細な評論が含まれています。甚大な被害と傷をもたらした戦争の20世紀を経て、文化や人や国の断絶、隔絶に軋む世界で、どう考え、なにを書いていくのか。手がかりのたくさんある1冊です。」
テッド・チャン『あなたの人生の物語』。』「映画『メッセージ』の原作でもある表題作は、言葉と時間についてこんなふうに書けるのか!というすごい小説。“地獄とは神の不在なり”の、死生観というか、宗教観というか、人間と不条理と祈りへの思いが自分が思っていることと通じるような気がします。ついでやけど、テッド・チャンさん誕生日いっしょです。」
『織田作之助』。「オダサクといえば『夫婦善哉』と言われますがはっきり言ってわたしは嫌いです!他にいいのがようさんあるのになんでソレやねん!と思ってます。『木の都』、『アド・バルーン』『世相』、大阪の街のきらびやかさと影、人のままならさと情が詰まってます。『可能性の文学』は小説書きたい人は必読です。」
松浦理英子『最愛の子ども』。「学校の教室という、時間的空間的に限られた場所だからこそ生じた奇跡的な愛情と関係性。性別や属性を越えて人と触れ合うことの尊さを松浦さんは書き続けていると思います。」
中島京子『長いお別れ』。「だんだん記憶や思考を保てなくなっていく父と戸惑う家族。妻である母と、近くにいたり遠くにいたりの娘たちは、想いもそれぞれ。人の心と瞬間、愛情と記憶。中島さんの描き方がとても好きです。」
ケヴィン・リンチ『廃棄の文化誌』。「最近の建物や商業施設ってできたときが頂点であとは下り坂、時間が経って味が出るとか発展するとか全く考えてないよね?!と日頃思っていたわたしに、そうそう!それやん!と激しい肯きと希望を与えてくれた本。復刊ありがとう!同じ著者の『都市のイメージ』は人文地理、建築系には必読書。」
『一年一組 せんせい あのね』。「本の中の子供たちと同じ年頃のときに読み、言葉っておもろい!わたしも書きたい!と対抗意識が湧き、今に至ります。今売ってないなんて信じれない。「ぼくだけほっとかれたんや」「わたしらほんまにどうなるんやろ」だけでも読んでください。後ろの対談を読むと子供の時はわからなかったことが…。」
サルバドール・プラセンシア『紙の民』。「最初のほうにタイガーマスクが出てくるし、現代の世界の人も文化も言語も行き交う状況から生まれたすごい小説。複数の語りが別の段組みで表されてたり、意識がない部分は黒塗りだったり、こんな本はなかなか作れないのでぜひお手元に1冊。だめな男たちがなんとか生きようとする姿がおかしくて切ないです。」
今回もフェア本お買い上げの方に、小冊子をレジにてお渡しさせていただきます。
柴崎友香さん書き下ろしの寄せることば「柴崎友香の本棚」、本棚全リストが掲載されたオリジナル冊子です。
フェア台には実際に柴崎友香さんの家にある本棚の写真もファイルにして展示しております。選書の中にない本ももちろんたくさんあり、河出文庫やちくま文庫、早川文庫が勢ぞろい。眺めるだけでもたのしいです。ぜひ併せてご覧下さい。
そして今回『公園へ行かないか?火曜日に』の表紙に柴崎さんの撮影された写真が使われているのですが、Twitterでもたくさんアップされています。文章とまとめてファイルにしていますので、ぜひアイオワの空気を写真で感じてみてください。
『公園へ行かないか?火曜日に』の舞台となるアイオワの写真を眺めることで本書がよりたのしめそう。その10までまとめていますので続きはこちらからぜひ。
さていつものように長くなってきましたが、お茶でも飲みながらゆっくりとお付き合いください(笑)
最後に今回『柴崎友香の本棚』特別編ミニ企画として本棚の裏側に『この街の今はMAP』、
『この街の今はポスト』を設置しています。柴崎友香さんの著作の中に『その街の今は』という作品があるのですが、その作品の舞台は主に心斎橋となっていて、わたしたちが普段過ごしているあそこやここが作中に出てきます。ちょうど刊行されてから約10年。
この街はいまどうなっているんだろう?
どんな街でどんな魅力があり、何が変わったんだろう。この街で過ごしているみなさんに今のこの街のことを教えてほしい。ということでアンケート用紙とポストを設置しましたので、どんどん書き込んで『この街の今はポスト』に投函してくださいね。いただいた内容は後日SNSにアップさせていただいたり、地図に書き込ませていただきます。
夜の心斎橋を『その街の今は』とアイフォン片手に自転車で走ってみたのですが、なんとも言いがたいとても不思議な気持ちになりました。
『滝口悠生の本棚』が終了する頃、滝口さんには「次は柴崎友香さんで開催したいです。」とお伝えしていて、同じ時期に柴崎さんにも気持ちだけは伝えていた本棚企画。ようやくつながった気がして第二弾をスタートする今、とてもわくわくしています。
柴崎友香さんの作品がすきです。
シンプルだけど、とても大きな原動力。
もうすでに多くの方が知っているであろう柴崎友香さんを改めてご紹介出来ること、そしてまだ柴崎友香さんに出会っていない誰かと柴崎さんをつなぐことができたならこんなにうれしいことはありません。
最後にこのブログをここまでお読みいただいた皆様、そしてフェアに遊びに来てくださった皆様、遊びに行こうかなと考えてくださる皆様、そのすべての皆様に心より御礼申し上げます。
それでは、『柴崎友香の本棚』どうぞお楽しみくださいませ!
開催期間は8/1〜9/31まで。
みなさまいかがお過ごしでしょうか?
各地域で猛暑日が続きうだるような暑さですが、それでもなお夕暮れ時は毎年同じような夏空で、なんだか少しほっとします。
追記を書いている今は9/9。
鈴虫も鳴き始め、時折涼しい風が吹くようになりました。
最後の追記を書いているのは10月26日。昨日は満月でした。
さて本日は8/1よりスタートした本棚企画第二弾『柴崎友香の本棚』をご紹介したいと思います。
まずはこのフェアの主役、柴崎友香さんのご紹介をさせてください。
「柴崎友香ってどんなひと?」柴崎友香|tomoka SHIBASAKI
1973年大阪府生まれ。2000年に刊行されたデビュー作『きょうのできごと』が行定勲監督により映画化され話題となる。2007年『その街の今は』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞、2010年『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞、2014年に『春の庭』で芥川賞を受賞。小説作品に『ビリジアン』『パノララ』『わたしがいなかった街で』『週末カミング』『千の扉』、エッセイに『よう知らんけど日記』『よそ見津々』など著書多数。7月末に『公園へ行かないか?火曜日に』(新潮社)を刊行。8月末には『つかのまのこと』(KADOKAWA)を刊行予定。
柴崎友香オフィシャルサイト→
公式Twitter→
9月公開予定『寝ても覚めても』公式HP→
『寝ても覚めても』公式Twitter→
当店では何度もイベントにお越しいただいています。
『かわうそ堀怪談見習い』刊行記念 柴崎友香トークショー&サイン会
『きょうのできごと、十年後』(河出書房新社)刊行記念 柴崎友香さん朗読&トーク&サイン会in大阪
『わたしがいなかった街で』刊行記念 柴崎友香 キャンドルナイト朗読会&特別対談
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『本棚企画について』
このフェアは「選書フェアなぁ…もっと面白い形でできひんかなぁ。」というぼやきからはじまりました。
ほんの少しの違いでも、いままでと違うことができたなら、開催する側も、来て下さるお客様も、いまよりほんの少しだけ楽しめるようになるのではと、漠然と考えていたのです。
そんな時アイデアとして浮かんだのが「作家さんの本棚を再現する」でした。
作家さんは、どんな本を読んでいるんだろう?
どんな本を読んできたんだろう?
どんな本を大切にして、どんな本に影響を受けてきたんだろう?
その本たちを並べてみると、インタビューをするより、もしかしたら作家さんのことが知れるかもしれない。
第一弾として昨年『滝口悠生の本棚』を開催したのですが、フェアの終盤になると「第二弾も開催できるといいな。そして次に開催するなら柴崎友香さんがいいな。」と考えていたのです。
少し時間が経った頃、柴崎さんから「たくさん本が出ますー」とご連絡いただいたので、この刊行が続く時期にそれぞれの本を本棚企画でゆるやかにつないでいきたい。
『きょうのできごと』、『きょうのできごと、十年後』増補新版、『寝ても覚めても』(全て河出書房新社)、『 公園へ行かないか?火曜日に』(新潮社)、『つかのまのこと』(KADOKAWA)。
上記5点の刊行ラッシュ、そして『寝ても覚めても』の映画公開を9月に控えた今、柴崎友香さんをより多くの方に知っていただけたなら。
今回も柴崎友香さんに全面的にご協力頂き、実際に家にある本棚の写真撮影(こちらは実際にコーナーに貼り出しています。)、手描きPOP、選書、そしてフェアに際しての『寄せることば』までいただきました。
本棚の詳しいラインナップに関しましては、少しずつツイッターで告知していきますね。(随時こちらでも更新予定。)
本棚の総冊数は約40冊。
今回も柴崎友香さんの蔵書をお借りしているものもあります。
こちらはご購入いただくことは出来ませんが、絶版の本など大変貴重なものもございますので、ぜひこの機会に手にとってみてください。
貼り出しているPOPはすべて柴崎友香さんの手書き。
フェアも折り返し地点まで来ました。 (18.9.9現在)
ツイッターでアップしていたものをこちらにも掲載しますので、改めてフェア内容を一緒に振り返っていただけるとうれしいです。
さらに追加しました。(18.10.26現在)オレンジの文字は柴崎さんが補足してくださった分です。
柴田元幸訳 レアード・ハント『ネバーホーム』。 「小説は誰かの心の内を語れるのやろうか、小説を読む人はいったい誰の言葉を聞いているのやろうか。とつとつと語られる小さな声に耳を澄まし続け、たどり続けた先に待ちうけていた誰かの人生に、衝撃を受けずにはいられませんでした。」
吉田健一『東京の昔』。 「都市を書くこと、場所を書くことについて、これや!この感じやん!と読むのがひたすら楽しい大好きな小説。″ここ″があるから″そこ″がある。どこでもないどこかもここではないどこかもなくて、そこへ行けばそこがここになるのだ。」
田中小実昌『ポロポロ』。 「戦争やめとこうよ、とこれ以上に思う本はないかも。人の存在にうまく理由をつけて“物語”にしてしまうことを徹底的に拒否する。実際の経験や実在の人を書くことはどういうことか、その厳しさを教えてくれる、何度も読み返している一冊です。」
野坂昭如『火垂るの墓・アメリカひじき』。 「映画はみんな知ってても原作を読んだ人は少ないのでは。戦争のなかと、戦争がおわったあと。誰が、何が、どう間違ったのか、曖昧にされたまま進んできた社会の矛盾と、そのしわ寄せは、今に至るまで続いていると思わずにはいられません。」
レイモン・クノー『文体練習』。 「おもろすぎるわー、というか、この人、めっちゃ頭ええな!と何回読んでも楽しい。文章を書きたいと思うのは、このときめきがあるからや!」
オギュスタン・ベルク『風土の日本』。 「“風景とは自然と人間との関係”と言うベルクに、大学で人文地理学を勉強していて最も影響を受けました。自然環境から人間は多大な影響を受けるし、風景や文化を見ればそこに暮らす人の内面が見えてくる。わたしは小説で風景そのものをずっと書いていくと思います。」
サン・テグジュペリ『人間の土地』。 「“人間であるということは、とりもなおさず責任を持つことだ。人間であるということは、自分には関係ないと思われるような不幸な出来事に対して忸怩たることだ。”生きることを支えてくれる言葉がたくさん詰まった本です。堀口大學の訳がすばらしい。解説は宮崎駿で飛行機マニアぶりを発揮。」
ヴィスワヴァ・シンボルスカ『終わりと始まり』。 「『きょうのできごと』の映画化のときに、行定さんから“ひとめぼれ”の詩をおくってもらって以来、何度も読み返しています。平明な言葉で、人間の存在も、愛も、歴史も戦争の残酷さと責任も、詩はこうして語ることができる。」
中井久夫『災害がほんとうに襲った時』。 「精神科医として勤務していた神戸の病院で阪神淡路大震災が起こった時の記録。忘れないために、これからのために。中井久夫さんの考えることや言葉は、人の心の複雑さ、壊れやすさと、人の存在をほんとうに思いやることを考えさせてくれます。ちくま学芸文庫のシリーズも是非読んでほしい。」
イー・フー・トゥアン『空間の経験』。 「わたしたちは空間を、場所を、どのように経験するか。古今東西の例を行き来しつつ、身体、認識から、地理、建築、思想に連なっていく、読んでいてとても楽しい本。同じ著者の『トポフィリア(場所愛)』も名作です!!」
「スタンダードブックストア心斎橋で開催中の『柴崎友香の本棚』でいちばん売れてるのは意外にも?イーフー・トゥアン『空間の経験』なのですが、ちくま学芸文庫から今月出た(原著は1982年)『個人空間の誕生』もとてもおもしろそう。トゥアンは『トポフィリア』も必読です。」 「ちくま学芸文庫は、地理、場所、空間、建築系のいい本がたくさんあるよね。」
フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』。 「何が妄想で現実か、何が真実でまがいものか、今の世界はますますディック的になっていて、ディックの小説に書き続けられている、人間であることのかなしみ、それでも人間に踏みとどまろうとするかなしみに、何度読んでも胸を打たれます。何度も泣いてしまって、なかなか読めない。」
夏目漱石『草枕』。
「小説に書かれている場所や風景を、“舞台”“背景”などと言ったりしますが、『草枕』を読めば、人の話も場所も思想もひと続きの線上に語られているのがわかります。一冊丸ごと書き写したいくらい好きな小説。ようかんやサボテンの表現が超かわいい。声に出して読むのも楽しい小説です。」
ジェニファー・イーガン『ならずものがやってくる』。 「人生は多くの場合、自分が期待した通りにはならない。夢はついえ、愛は失われる中で、人は自分や世界をどう受け入れるのか。ダメな人がたくさん出てくるとても愛しい小説。音楽小説でもあります。それにしてもわたしは、複数の視点と時間が平行して進む小説がすきやなぁ。」
川崎徹『あなたが子供だった頃、わたしはもう大人だった』。 「ずっと会っていない人が、だいぶ前に死んでいたことを知ったとき、知らなかった時間は、その人は自分の中で生きていたことになるだろうか。川崎徹さんの時間の感じ方には勝手に近いものを感じています。死者の記憶と共に生きること、それを書く小説。」
デニス・ジョンソン『ジーザス・サン』。 「小説を書いていくわたしを、救ってくれたのはこの本です。こんな小説を書きたい、とずっと思っています。この小説に出会えなければ、書けなくなっていたかもしれない。今は入手困難なのがとても残念ですが、来年新しい本が出るようなのでそれを待っています。」
『ニューヨークストーリー ルー・リード詩集』。 「引っ越しのたびにどっかいってないかまっ先に確認する大切な1冊。“きみの鏡になろう”“ペイル・ブルー・アイズ” “ヘロイン”…の詩の言葉にずっと救われてきました。欄外のエピソードや、アンディ・ウォーホルに対する思いも、冷戦終結直後のチェコのハベル大統領へのインタビューもとてもいいです。」
加藤典洋『世界をわからないものに育てること』。「『わたしがいなかった街で』の詳細な評論が含まれています。甚大な被害と傷をもたらした戦争の20世紀を経て、文化や人や国の断絶、隔絶に軋む世界で、どう考え、なにを書いていくのか。手がかりのたくさんある1冊です。」
テッド・チャン『あなたの人生の物語』。』「映画『メッセージ』の原作でもある表題作は、言葉と時間についてこんなふうに書けるのか!というすごい小説。“地獄とは神の不在なり”の、死生観というか、宗教観というか、人間と不条理と祈りへの思いが自分が思っていることと通じるような気がします。ついでやけど、テッド・チャンさん誕生日いっしょです。」
『織田作之助』。「オダサクといえば『夫婦善哉』と言われますがはっきり言ってわたしは嫌いです!他にいいのがようさんあるのになんでソレやねん!と思ってます。『木の都』、『アド・バルーン』『世相』、大阪の街のきらびやかさと影、人のままならさと情が詰まってます。『可能性の文学』は小説書きたい人は必読です。」
松浦理英子『最愛の子ども』。「学校の教室という、時間的空間的に限られた場所だからこそ生じた奇跡的な愛情と関係性。性別や属性を越えて人と触れ合うことの尊さを松浦さんは書き続けていると思います。」
中島京子『長いお別れ』。「だんだん記憶や思考を保てなくなっていく父と戸惑う家族。妻である母と、近くにいたり遠くにいたりの娘たちは、想いもそれぞれ。人の心と瞬間、愛情と記憶。中島さんの描き方がとても好きです。」
ケヴィン・リンチ『廃棄の文化誌』。「最近の建物や商業施設ってできたときが頂点であとは下り坂、時間が経って味が出るとか発展するとか全く考えてないよね?!と日頃思っていたわたしに、そうそう!それやん!と激しい肯きと希望を与えてくれた本。復刊ありがとう!同じ著者の『都市のイメージ』は人文地理、建築系には必読書。」
『一年一組 せんせい あのね』。「本の中の子供たちと同じ年頃のときに読み、言葉っておもろい!わたしも書きたい!と対抗意識が湧き、今に至ります。今売ってないなんて信じれない。「ぼくだけほっとかれたんや」「わたしらほんまにどうなるんやろ」だけでも読んでください。後ろの対談を読むと子供の時はわからなかったことが…。」
サルバドール・プラセンシア『紙の民』。「最初のほうにタイガーマスクが出てくるし、現代の世界の人も文化も言語も行き交う状況から生まれたすごい小説。複数の語りが別の段組みで表されてたり、意識がない部分は黒塗りだったり、こんな本はなかなか作れないのでぜひお手元に1冊。だめな男たちがなんとか生きようとする姿がおかしくて切ないです。」
今回もフェア本お買い上げの方に、小冊子をレジにてお渡しさせていただきます。
柴崎友香さん書き下ろしの寄せることば「柴崎友香の本棚」、本棚全リストが掲載されたオリジナル冊子です。
フェア台には実際に柴崎友香さんの家にある本棚の写真もファイルにして展示しております。選書の中にない本ももちろんたくさんあり、河出文庫やちくま文庫、早川文庫が勢ぞろい。眺めるだけでもたのしいです。ぜひ併せてご覧下さい。
そして今回『公園へ行かないか?火曜日に』の表紙に柴崎さんの撮影された写真が使われているのですが、Twitterでもたくさんアップされています。文章とまとめてファイルにしていますので、ぜひアイオワの空気を写真で感じてみてください。
『公園へ行かないか?火曜日に』の舞台となるアイオワの写真を眺めることで本書がよりたのしめそう。その10までまとめていますので続きはこちらからぜひ。
さていつものように長くなってきましたが、お茶でも飲みながらゆっくりとお付き合いください(笑)
最後に今回『柴崎友香の本棚』特別編ミニ企画として本棚の裏側に『この街の今はMAP』、
『この街の今はポスト』を設置しています。柴崎友香さんの著作の中に『その街の今は』という作品があるのですが、その作品の舞台は主に心斎橋となっていて、わたしたちが普段過ごしているあそこやここが作中に出てきます。ちょうど刊行されてから約10年。
この街はいまどうなっているんだろう?
どんな街でどんな魅力があり、何が変わったんだろう。この街で過ごしているみなさんに今のこの街のことを教えてほしい。ということでアンケート用紙とポストを設置しましたので、どんどん書き込んで『この街の今はポスト』に投函してくださいね。いただいた内容は後日SNSにアップさせていただいたり、地図に書き込ませていただきます。
夜の心斎橋を『その街の今は』とアイフォン片手に自転車で走ってみたのですが、なんとも言いがたいとても不思議な気持ちになりました。
『滝口悠生の本棚』が終了する頃、滝口さんには「次は柴崎友香さんで開催したいです。」とお伝えしていて、同じ時期に柴崎さんにも気持ちだけは伝えていた本棚企画。ようやくつながった気がして第二弾をスタートする今、とてもわくわくしています。
柴崎友香さんの作品がすきです。
シンプルだけど、とても大きな原動力。
もうすでに多くの方が知っているであろう柴崎友香さんを改めてご紹介出来ること、そしてまだ柴崎友香さんに出会っていない誰かと柴崎さんをつなぐことができたならこんなにうれしいことはありません。
最後にこのブログをここまでお読みいただいた皆様、そしてフェアに遊びに来てくださった皆様、遊びに行こうかなと考えてくださる皆様、そのすべての皆様に心より御礼申し上げます。
それでは、『柴崎友香の本棚』どうぞお楽しみくださいませ!
開催期間は8/1〜9/31まで。