December 22, 2017
【BOOK】「全国の将棋好き書店員がおすすめする読む将フェア」【本のうら表紙♯8】その1
【本のうら表紙 ♯8】
「等身の棋士」(ミシマ社)刊行記念
北野新太さんx今泉健司四段のトークショー&サイン会の開催にあわせて、
「全国の将棋好き書店員がおすすめする読む将フェア」がはじまります!
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こんにちは、書籍担当のもりかわです。
なぜスタンダードブックストアで将棋のイベント、そしてフェアを?
そう思われても当然だと思います。そもそも当店にはいわゆる「将棋本コーナー」がありません。棚がない理由は、これまでお客様から求められたことがそれほどない、ということもある程度関係しているかもしれません。
そんなスタンダードブックストアが将棋のイベントをする、フェアをする。
それはなぜか?巷で流行っているから?ただ担当者が個人的に好きだから?注目の将棋の新刊が発売になるから?
後ろの2つは、事実です。担当者(私)が個人的に将棋が好きで、その中でも特におすすめしたい将棋に関する本「透明の棋士」の著者・北野新太さんの新刊が発売になる、と聞いたことが今回のフェア・そしてイベント開催のきっかけでした。
まずは北野新太さんのご紹介を。
■ 北野 新太|きたの・あらた
1980年、石川県生まれ。学習院大学在学時に雑誌『SWITCH』で編集を学び、2002年に報知新聞社入社。以来、記者として編集局勤務。運動第一部読売巨人軍担当などを経て、文化社会部に在籍。2010年より主催棋戦の女流名人戦を担当。2014年、NHK将棋講座テキスト「第63回NHK杯テレビ将棋トーナメント準々決勝 丸山忠久九段 対 三浦弘行九段『疾駆する馬』」で第26回将棋ペンクラブ大賞観戦記部門大賞受賞。著書に『透明の棋士』(ミシマ社)がある。
北野新太さんは報知新聞の文化社会部の記者の方で、将棋の取材を通じて触れた「棋士」の存在に魅力に感じ、そのことを綴られたのが「透明の棋士」という一冊です。(2015年にミシマ社より刊行)
北野さんの書く文章が、他の方が書く将棋に関する文章とどう違うのか。ここからは個人的な感想になってしまいますが、端的に言うと「書こうとしているもの」「伝えようとしていること」の違いのように思います。
将棋というのは一般的に「棋譜」と呼ばれる、駒をどこにどんなふうに動かしたか、という記録によって表現され、それをもとに言葉による解説が行われます。その「棋譜」は、よく言われる喩えとして「楽譜」のようなもので、わからない人からすると何が書かれているのか全くわかりません。
なので、「あの手がすごかった」と言われても、知らない側からするとそのすごさも何もわかりません。
北野さんの文章の中にはその「棋譜」はほとんど出てきません。また、北野さんが書こうとしている部分もそういった部分ではないように思います。あの手が、この手が、ということではなく、その一手を指す時の棋士の様子、心情、それまでの歩み、棋士の「人として」の部分に魅力を感じ、そこを必死に言葉にして伝えようとしている。だからこそ、伝わってくる。同じ「人として」、棋士がどんな存在なのか、どういった部分が魅力的なのか。
「透明の棋士」はまさに、そんな棋士の「透明さ」を伝えようとしている本です。
「透明の棋士」を読んだ時、私は、この人の言葉で語られる将棋の世界をもっともっと見てみたいと思いました。
そして二年経ち、その人の新刊が出る、と。今度のタイトルは「等身の棋士」だと。
中身がわからないうちから、ただ楽しみで楽しみでなりませんでした。
*
ゲラと呼ばれる本になる前の段階のものを読ませていただいて、「もっともっと見てみたい」と思っていた通り、前作以上にたくさんの棋士の姿が描かれていて、この人のこの「声」が聞きたかった、という話もたくさんありました。そして前作「透明の棋士」で描かれていた棋士のその後、成し遂げた姿、その変化…前作を読んでいるからこそ感じられる物語のつづき。
これは売りたい、と思いました。
ただ、フェアをやることは、最初は正直「無理だろうな」と思っていました。
理由は最初に挙げたように、当店には将棋の棚がないくらい普段将棋の本を取り扱っていないのに、将棋の本を突然集めてフェアをしても誰も見てくれないだろうと。
それに、本を選ぶ自分自身の知識にも自信がありませんでした。「将棋が好きで」と言ってみても、将棋の長い歴史と同じくらいたくさん出ている本のうち、読んできた本はほんのほんの一部分にすぎない。それなのに、「この本が素晴らしい!」と言い切れるのかと。
さらに、自分の店が、いくら「好きです!いいんです!最高なんです!」と最大級に叫んでも、一店舗の中でだけで終わって広がりがないなと思いました。
目的は「この本(「等身の棋士」)が売りたい」なのです。
これらを併せて考えたとき、全国の将棋好きな書店員さんにおすすめの将棋本を出し合ってもらって(もちろん自分も一書店員として参加して)、それをフェアにできないか、と思いつきました。もちろん自分の店のメインの一番売りたい本は「等身の棋士」です。
そう考えて、そのことを「透明の棋士」に引き続き「等身の棋士」を刊行される出版社・ミシマ社の営業のトリイさんに相談しました。「全国の将棋好きな書店員さん」が果たして全国のどこに、どれほどいるのか、一書店員の立場と力ではどうやっても見つけることもつながることもできないと思ったからです。また、ミシマ社さんは「直取引」という書店と一対一で直接取引をする特異な出版社だったので、その分一人一人の書店員さんと営業さんのつながりや信頼関係も深いのだろうと思ったことも理由の一つでした。
その相談を快く受けてくださったミシマ社さんは、早速「将棋好きな書店員さんを探してみます!」と言ってくださり、実際に全国各地にいらっしゃることを教えてくれました。
ただ、「将棋好きな書店員さん」がいらっしゃることがわかっても、この企画に参加してもらえるかどうかはわからない。「等身の棋士」が発売する12月という時期は書店にとっても最も繁忙期。忙しい中、本を選んでコメントまで書くということをしてもらえるのか。
お願いしておきながら、誰も参加してもらえないかもしれない、とも思いました。
興味を持って参加していただくためにも、このフェアがどんな目的で、どんな思いで、どうしたいのかを書店員さんに伝える簡単な企画書のようなものが必要だという話になり、その作成にかかりました。
北野さんの新刊をどうしても売りたいと思ったこと、将棋フェアといっても「ただ将棋に関する本を集めただけ」のフェアにしたくないこと、そのために本を知っている全国の将棋好き書店員の方に心から薦める将棋の本をコメント付きで出し合ってもらえないかと考えたこと、そこにさらに「透明の棋士」の著者の北野さんのおすすめ本も出していただき、なんなら最後にそれらをまとめた簡単な冊子のようなものを作ってフェアの本を買われた方に記念にお渡しできないかと考えたこと、など思いの丈を書きました。(自分だったらその冊子絶対に欲しいと思ったからです)
目的は3つ。
1)将棋の魅力を、将棋をまだ知らない、もしくは気になっている方へきちんと伝えるフェアにしたい
2)かつ、きちんと本が売れるフェアにしたい
3)その中でも特に北野新太さんの新刊「等身の棋士」を一番におすすめしたい!
将棋好きな「書店員」だからこそ作れるフェア、景色を作りたい。
えらそうかもしれないし、大げさかもしれないとも思いましたが、本当にそんなフェアをつくりたいと思いました。
その企画書とアンケートをもとに、ミシマ社の営業さんが全国各地の将棋好き書店員さんに協力をお願いしていってくれました。
こうして、「全国の将棋好き書店員がおすすめする読む将フェア」が始まりました。
⇒いよいよフェアの開始!そしてイベント開催!その2に続きます
なぜスタンダードブックストアで将棋のイベント、そしてフェアを?
そう思われても当然だと思います。そもそも当店にはいわゆる「将棋本コーナー」がありません。棚がない理由は、これまでお客様から求められたことがそれほどない、ということもある程度関係しているかもしれません。
そんなスタンダードブックストアが将棋のイベントをする、フェアをする。
それはなぜか?巷で流行っているから?ただ担当者が個人的に好きだから?注目の将棋の新刊が発売になるから?
後ろの2つは、事実です。担当者(私)が個人的に将棋が好きで、その中でも特におすすめしたい将棋に関する本「透明の棋士」の著者・北野新太さんの新刊が発売になる、と聞いたことが今回のフェア・そしてイベント開催のきっかけでした。
まずは北野新太さんのご紹介を。
■ 北野 新太|きたの・あらた
1980年、石川県生まれ。学習院大学在学時に雑誌『SWITCH』で編集を学び、2002年に報知新聞社入社。以来、記者として編集局勤務。運動第一部読売巨人軍担当などを経て、文化社会部に在籍。2010年より主催棋戦の女流名人戦を担当。2014年、NHK将棋講座テキスト「第63回NHK杯テレビ将棋トーナメント準々決勝 丸山忠久九段 対 三浦弘行九段『疾駆する馬』」で第26回将棋ペンクラブ大賞観戦記部門大賞受賞。著書に『透明の棋士』(ミシマ社)がある。
北野新太さんは報知新聞の文化社会部の記者の方で、将棋の取材を通じて触れた「棋士」の存在に魅力に感じ、そのことを綴られたのが「透明の棋士」という一冊です。(2015年にミシマ社より刊行)
北野さんの書く文章が、他の方が書く将棋に関する文章とどう違うのか。ここからは個人的な感想になってしまいますが、端的に言うと「書こうとしているもの」「伝えようとしていること」の違いのように思います。
将棋というのは一般的に「棋譜」と呼ばれる、駒をどこにどんなふうに動かしたか、という記録によって表現され、それをもとに言葉による解説が行われます。その「棋譜」は、よく言われる喩えとして「楽譜」のようなもので、わからない人からすると何が書かれているのか全くわかりません。
なので、「あの手がすごかった」と言われても、知らない側からするとそのすごさも何もわかりません。
北野さんの文章の中にはその「棋譜」はほとんど出てきません。また、北野さんが書こうとしている部分もそういった部分ではないように思います。あの手が、この手が、ということではなく、その一手を指す時の棋士の様子、心情、それまでの歩み、棋士の「人として」の部分に魅力を感じ、そこを必死に言葉にして伝えようとしている。だからこそ、伝わってくる。同じ「人として」、棋士がどんな存在なのか、どういった部分が魅力的なのか。
「透明の棋士」はまさに、そんな棋士の「透明さ」を伝えようとしている本です。
「透明の棋士」を読んだ時、私は、この人の言葉で語られる将棋の世界をもっともっと見てみたいと思いました。
そして二年経ち、その人の新刊が出る、と。今度のタイトルは「等身の棋士」だと。
中身がわからないうちから、ただ楽しみで楽しみでなりませんでした。
*
ゲラと呼ばれる本になる前の段階のものを読ませていただいて、「もっともっと見てみたい」と思っていた通り、前作以上にたくさんの棋士の姿が描かれていて、この人のこの「声」が聞きたかった、という話もたくさんありました。そして前作「透明の棋士」で描かれていた棋士のその後、成し遂げた姿、その変化…前作を読んでいるからこそ感じられる物語のつづき。
これは売りたい、と思いました。
ただ、フェアをやることは、最初は正直「無理だろうな」と思っていました。
理由は最初に挙げたように、当店には将棋の棚がないくらい普段将棋の本を取り扱っていないのに、将棋の本を突然集めてフェアをしても誰も見てくれないだろうと。
それに、本を選ぶ自分自身の知識にも自信がありませんでした。「将棋が好きで」と言ってみても、将棋の長い歴史と同じくらいたくさん出ている本のうち、読んできた本はほんのほんの一部分にすぎない。それなのに、「この本が素晴らしい!」と言い切れるのかと。
さらに、自分の店が、いくら「好きです!いいんです!最高なんです!」と最大級に叫んでも、一店舗の中でだけで終わって広がりがないなと思いました。
目的は「この本(「等身の棋士」)が売りたい」なのです。
これらを併せて考えたとき、全国の将棋好きな書店員さんにおすすめの将棋本を出し合ってもらって(もちろん自分も一書店員として参加して)、それをフェアにできないか、と思いつきました。もちろん自分の店のメインの一番売りたい本は「等身の棋士」です。
そう考えて、そのことを「透明の棋士」に引き続き「等身の棋士」を刊行される出版社・ミシマ社の営業のトリイさんに相談しました。「全国の将棋好きな書店員さん」が果たして全国のどこに、どれほどいるのか、一書店員の立場と力ではどうやっても見つけることもつながることもできないと思ったからです。また、ミシマ社さんは「直取引」という書店と一対一で直接取引をする特異な出版社だったので、その分一人一人の書店員さんと営業さんのつながりや信頼関係も深いのだろうと思ったことも理由の一つでした。
その相談を快く受けてくださったミシマ社さんは、早速「将棋好きな書店員さんを探してみます!」と言ってくださり、実際に全国各地にいらっしゃることを教えてくれました。
ただ、「将棋好きな書店員さん」がいらっしゃることがわかっても、この企画に参加してもらえるかどうかはわからない。「等身の棋士」が発売する12月という時期は書店にとっても最も繁忙期。忙しい中、本を選んでコメントまで書くということをしてもらえるのか。
お願いしておきながら、誰も参加してもらえないかもしれない、とも思いました。
興味を持って参加していただくためにも、このフェアがどんな目的で、どんな思いで、どうしたいのかを書店員さんに伝える簡単な企画書のようなものが必要だという話になり、その作成にかかりました。
北野さんの新刊をどうしても売りたいと思ったこと、将棋フェアといっても「ただ将棋に関する本を集めただけ」のフェアにしたくないこと、そのために本を知っている全国の将棋好き書店員の方に心から薦める将棋の本をコメント付きで出し合ってもらえないかと考えたこと、そこにさらに「透明の棋士」の著者の北野さんのおすすめ本も出していただき、なんなら最後にそれらをまとめた簡単な冊子のようなものを作ってフェアの本を買われた方に記念にお渡しできないかと考えたこと、など思いの丈を書きました。(自分だったらその冊子絶対に欲しいと思ったからです)
目的は3つ。
1)将棋の魅力を、将棋をまだ知らない、もしくは気になっている方へきちんと伝えるフェアにしたい
2)かつ、きちんと本が売れるフェアにしたい
3)その中でも特に北野新太さんの新刊「等身の棋士」を一番におすすめしたい!
将棋好きな「書店員」だからこそ作れるフェア、景色を作りたい。
えらそうかもしれないし、大げさかもしれないとも思いましたが、本当にそんなフェアをつくりたいと思いました。
その企画書とアンケートをもとに、ミシマ社の営業さんが全国各地の将棋好き書店員さんに協力をお願いしていってくれました。
こうして、「全国の将棋好き書店員がおすすめする読む将フェア」が始まりました。
⇒いよいよフェアの開始!そしてイベント開催!その2に続きます