July 18, 2012
【EVENT】川内倫子 x 福永信トークショー、あっという間の2時間でした!

7/14(土) 東京都写真美術館にて開催の『川内倫子展 照度 あめつち 影を見る』の図録にもなっております『照度 あめつち 影を見る』の刊行を記念し、川内倫子さんのトークショーを開催いたしました。聞き手は小説家の福永信さん。とっても楽しいトークショーとなりました。
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会場のBFカフェには110人の参加者が集まりました。

これまでは先に写真集を出版してから、展覧会を開催するというパターンでしたが、今回の個展『川内倫子展 照度 あめつち 影を見る』では初めて、写真集出版の前に「あめつち」を展示することとなりました。
展示の空間構成が初めてつかめて、これまでで一番満足度の高い展覧会のようで、ある程度の規模がないと実現できませんでした。

今回の個展では映像作品が効果的に使われています。川内さんは学生時代、映像の授業の方が多く、映像の道も考えられていたそうです。私個人的には実際に『鳥の死骸』の映像で、風で羽が微かに動き、後ろで蝉の声が聞こえるのを見たときに『生』の儚さが襲ってきました。静止している写真の『鳥の死骸』では、そこまでダイレクトには感じないのですが、何度も繰り返し見ているとじわじわと『生と死』が伝わってきます。川内さんが繰返し見ることのできる写真集を作り続ける理由はここにあるのかもしれません(あくまでも私見)。

川内さんは撮影が終了すると『終わり』っていうタイプではなく、ご自身で編集して写真集が出来上がって初めて、『作品』として認識されるようだ。展覧会もプリントして終わりではなく、ご自身で会場構成して出来上がってようやく『作品』になる。撮影から現像、編集等一人でされることは多いが、印刷、紙の選定、ロゴ等は周囲の意見を聞きながら進め、それを楽しんでいるように思える。作品が完成したり、展示が完了してから、『自分はこれがやりたかったんだ』と自分の考えを再発見することが多いそうだが、川内さんがいかに自分の感性に忠実に仕事を進めてきたかの証ではないだろうか?あらかじめ完成を想像して進めるのではなく、自分のやりたいことを信じて、さらに周囲の意見にも耳を傾けた結果として素晴らしい成果が得られている。川内さんは『全部わからない方がいい。すき間がある方がいい。』と表現。

今回聞き手をお勤めいただいた福永信さんと川内さんは『リトルモア』つながり。お二人とも本のデビューがリトルモア。
文字が少なく、本に接している時間が少ない写真集は損した気分になると福永さんは感じていたそうです。それを打ち破った写真集が川内さんの『うたたね』。ストーリーも言葉もないのに小説以上に長く接したそうです。
福永さんの川内さん評…『うたたね』『花火』の頃の気持ちを今も持ち続けている。写真は大きくなっているが、眼差しが変わっていない。いい気にならず、変わりながら変わっていないところが凄い。


川内さんと福永さんの息がぴったりで、会場にはたびたび笑いが。
サイン会へ。それにしても長い列。











川内さんはこのたび、
写真集『光と影 Light and Shadow』 定価:2, 625円(税込)
を自費出版されました。
川内さんはニューヨークのご友人を東北の被災地に案内し、ご自身は本にするつもりもなく記録用に写真を撮っておられましたが、ある時白と黒のつがいの鳩に出会います。飼われていた鳩のようで、飛んで行ってはまた元の場所に戻ってきます。飼い主、元の家を探しているのでしょう。川内さんにはそれが世界の混沌を表しているように見え、この凄い景色を本にしてもいいと思えたそうです。ほんの小さな作為を入れてもいけないと考え、見開きというご自身のスタイルを封印して本にしました。透明にする作業が本当に難しかったそうです。
福永さんは見開きがないから、じーんときた。饒舌なものはなにもないけど強いものを感じた、とおっしゃってます。
本書は経費を引いた売上の全額を被災地の復興支援のために寄付されます。会場では好評ですべて売り切れてしまい、追加注文中です。ぜひお買い求めください。

会場には4月に対談してくださった元福島第一原発作業員・小川篤さんとフォトジャーナリストの小原一真さんもお見えになりました。
川内さんは自分がやりたいこと、見たいことを自然に出してきたので同じことをしていても飽きることがないそうだ。でもそれは実は同じことではないのだろう。一つ作品を完成させるごとにコツコツと階段を上ってきたとおっしゃるように、同じことをしているようでステージが自然に変わっているはずだ。出版デビューで写真集を同時に3冊出せたのも、それまでに5年間個展を積み重ねてきたから。『準備はできていた』と。次々にやりたいことが湧いてきて、今出すべきなのか?もう少し熟成させるべきなのか?と心に矛盾や葛藤を抱えながら、時代の流れを考えて、自分の感性を信じて発表する。作品にするとはそういうことなのか!世に問うタイミングも含めて『作品』なのだ。
最初は本を作るだけでいいと考えていて、作品展はあくまで本のプロモーションという位置づけだったのが、今は本と作品展の比率が同じくらいになっているそうだ。川内さんのこれからの活動から目が離せない。
川内さんが使った『すき間』…私も大好きな言葉だ。『すき間』には可能性を感じる。私も誰もが入りやすいように『すき間』をできるだけ多くしたいと考えている。やり過ぎず一歩手前で抑え、お客様やイベントに関わってくださる方々等々あらゆる方と供にこの店を変え続け、可能性を拡げたいのである。