January 18, 2012

【BOOK】ものすごくうるさくて、ありえないほど近い【映画化】

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死んだパパの遺した謎の鍵と「ブラック」というメモ。それ合う鍵穴を探し、NY中の「ブラック氏」を訪ね回るオスカーの見た9・11後のアメリカとは。"あの出来事"がもたらした壮絶な重圧とそれを俯瞰する空虚な文体。それでいて心の奥深くに響くあたたかな神話的滋養に満ちた現代作家ジョナサン・サフラン・フォアの傑作です。
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愛する父親の死因と、「テロ」という突然性はオスカーにとって繋がらない。パパはなぜ死んだのか。そうであったかもしれない最悪の可能性を次々と頭に浮かべては足取りが重くなり、地下鉄にも乗れなくなる。(暗喩的なPTSDだろう)

近づいては離れていく死の理由と、同じく「この世界」に残されたオスカーの母親。ニューヨークを彷徨するオスカーの探り手に触れる、何人もの「ブラック氏」。それぞれが、オスカーの父親に対して追悼の弁を述べながらもそれぞれの日常へと帰っていく。

そんな中でオスカーが出会うその他の人間にも様々な傷がある。第二次世界大戦、ドイツでのドレスデン大爆撃、広島原爆投下。あらゆる過去の「突然」が浮かんでは忘れ去られそうになり、忘れそうになると抉る様に記憶へと蘇る。何か愛するものを喪失した人間にしか覚えることの出来ない、覚えたくなんてなかった感情。そんな人間たちと会話を交わす内、再び生きていた頃のパパがよく吹いてくれた「アイ・アム・ザ・ウォルラス」の口笛が聞えてくる・・・。

原書から、翻訳された本書まで、タイポグラフィや行間の編集によるビジュアルライティングによって一見すると実験的な小説に見えなくもない作品です。しかし、限りなく予測不可能な悲劇による喪失を抱えた人間個人の感情の吐露が、ここまで普遍性と圧倒的な愛に溢れた作品になった例は多くないのでは。

3・11を抱え続けることになった日本で、今読むべき本のひとつなのかも知れません。少なくとも、しばしば乱立する様々な直接的解決策に混乱しそうになるわれわれにとって、小説本来の役割としての深遠な知性をもたらす作品であることは間違いありません。

遠回りであれ、残された人間は歩き続けなければならない。自分が残す側に立つまでは、残され続けるほかない。これからもずっと。ともあれ、個人的に、本当に読んでよかったと思った作品です。今年もなるだけ、うんざりするくらい本が読めたら幸せです。

映画化ですね。お時間と興味のある方は劇場まで足を運んでみてはいかがでしょうか。原作も、読み応えもあり、なおかつその長大さを感じない傑作ですので。ぜひ。


「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
ジョナサン・サフラン・フォア(著)
近藤隆文(訳)
NHK出版
¥2,300+税

*原文のペーパーバックも在庫あります。
"Extremely loud & Incredibly close"



映画化情報
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
脚本:エリック・ロス
監督:スティーブン・ダルドリー
出演:トム・ハンクス / サンドラ・ブロック / ジョン・グッドマン / ヴィオラ・デイヴィス / ジェフリー・ライト / トーマス・ホルン
公式サイト(日本語)→http://wwws.warnerbros.co.jp/extremelyloudandincrediblyclose/

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