March 12, 2011
【BOOK】 最終巻 / 池澤夏樹=個人編集「世界文学全集」 / 河出書房新社
2007年11月、ケルアック「オン・ザ・ロード」(青山南訳)から始まった約3年半に渡る世界文学を巡る道程の果ては、コンラッド「ロード・ジム」で幕を閉じました。現行の訳書では鈴木建三氏からバトンタッチを受け、柴田元幸氏の新訳で。
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「ロード・ジム」
J・コンラッド(柴田元幸 訳)
2,600円+税
−ぼくがこの作品を選んだ理由 池澤夏樹
成功するのはそうむずかしいことではないが、失敗からの回復は容易でない。とりわけ、世間のみなから軽蔑され、自分でも自分を軽蔑しなければならないような道義的な失敗の場合は。卑怯者に栄光はあるか?これは最も現代的な古典であり名作である。
(帯より引用)
30巻、遂に全て出揃いました。勿論、STANDARD BOOKSTOREでも全巻並べてお待ちしております。ラインナップはこちらを参照頂ければ。
最後は30冊の中から、個人的な1位の紹介で〆させて戴こうかと。
栄えある文芸担当Yの選んだ第一位は・・・
「鉄の時代」
J.M.クッツェー (くぼたのぞみ 訳)
2000円+税
やはり、この一冊。他の作家にしようか迷いましたが、自分に嘘は付けません。世界で一番好きな作家のひとりです。原書で読もうかと諦め掛けていたとき、大好きなくぼたさんの翻訳で初訳が出たのが嬉しすぎ、すぐに買って何度も読み返しました。
クッツェーの描いた南アフリカ。アパルトヘイトとしてのエスタブリッシュメントと虐げられる民衆との闘争の果て。そこでホームレスの男と暮らす末期癌を宣告された初老の女性、ミセス・ヘレン。身体を節々まで襲う痛みを纏いながら、遠い異国に住む娘に遺書を綴りながら。
噎せ返る土埃とケープタウンの凡庸な繰り返しの中、痛みとしての母性と暴力としての父性が現代の形で入り混じるさまを目の当たりにしたような気がして、夢中でページを捲りました。僕にとって、とても重要な一冊です。
それでは言いたいこともひとしきり書いたところで筆を置きます。
みなさん、ぜひ。
BF/文芸担当:Y