July 25, 2010

【BOOK】文明批判と叙情

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「地上の見知らぬ少年」はどこか私でもあり、おそらくはあなたでもあります。あてもなくぶらつき、理屈抜きでものごとを見つめる人なのです。 by J・M・ル・クレジオ

「もし、何かを収集するのなら、野菜にしよう。ぼくは、市場の陳列台にばらばら積みになっていたり、白木の箱にきれいに揃えて並べられていたりする野菜を眺めるのが好きだ。野菜には深刻ぶったところが全然ない。大それた望みなどなく、とりどりの奇妙な色で、風変わりな形で、虫食いの跡のある葉っぱで、所帯じみたものの風情で、微笑ませてくれる。(本文より) 
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名作「海をみたことがなかった少年」と同時期に発表され、ル・クレジオ文学の大きな転換点となった傑作が待望の邦訳。はじめて地上におりたち、「世界」を眼にする無垢な少年の瞳。

海、空、大地、樹木、草花、動物などのあるがままの美しさを描いた傑作長篇となっています。

「いつまでもどこまでも、ぼくはあなたに話していたい、ただ単に言葉でしかない言葉でなく、大空にまで、海にまで至るような言葉で。ぼくにはその声が聞こえている、その音楽が聞こえている。それは初めて耳にする言葉ではない。いたるところで打ち震え、いたるところで輝いている。白い岩の上に、海のおもてに、街の中心に、そして道行く人の瞳のなかにも輝いている」

その美しい、香る、清冽な文体にこころ奪われる。

「地上の見知らぬ少年」
河出書房新社 J・M・ル・クレジオ 鈴木雅生 訳 ¥2940

3164NDB0BNL__SL500_AA300_ 「海を見たことがなかった少年」ありふれた子供たちの遊び声が今にも聞こえてきそうな珠玉の短編8話収録。 集英社文庫






51ck2GkERrL__SL500_AA300_ インディオの世界をはじめて眼にしたときの驚きと、無文字社会に生きながらも、あらゆる書字言語(エクリチュール)に先行する叡智を保持し、近代人の病である〈所有〉という概念に抵抗するインディオ社会の宇宙観。西欧世界とはまったく異質な輪郭と色彩をもつインディオの世界認識のありかたを称揚し、ヨーロッパ文明とインディオ社会のヴィジョンの対立をストレートに描く、ル・クレジオの記念碑的著作。(エッセイ)
失われた土着の宇宙観とその残照を擁護する、現代文明批判の書。ランダムに並べられたインディオの道具の写真と、西洋の街並み写真や雑誌広告が、暗に現代文明への皮肉となっております。

岩波文庫 ¥1260

地下 海外文学コーナーで販売中。






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