May 09, 2010

【BOOK】J.M.Coetzee

個人的にここ最近非常に敬愛している、これからも幾度となく読み続けるであろう作家との邂逅を果たしたので紹介いたします。

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ジョン・マックスウェル・クッツェー(John Maxwell Coetzee, 1940年2月9日 - );南アフリカ出身 2003年ノーベル文学賞受賞
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ブッカ―賞受賞作『マイケルK』で初めて彼の作品に触れたのですが、その静謐で美しくありながら冷徹な程ありありと人間の生き様を描き上げる、剛柔兼ね備えた圧倒的な筆力に心から酔いしれました。

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内戦による騒乱のケープタウンから、病気の母親を連れて彼女の故郷プリンスアルバートを目指す男、マイケルK。道々彼に降りかかる様々な暴力的な「力」との対峙から、次第にマイケルKは自らの生き方の指針とも呼べるものを見つけていきます。それは時に痛々しく孤独なストイシズムでもあり、あるいは肉体的な人間と聖なる大地との出会いの喜びに触れる生き方でもあるのです。

全体を通じてあまりにもリアリスティックでありながら、根底に流れるカフカ『断食芸人』のような幻想性をも感じる作品で。クッツェー自身がフランツカフカに心底傾倒していた人間であるというのも、正に頷けます。

マイケルKが初めて自ら収穫した南瓜を食べる瞬間の場面、それはそのままカフカ『断食芸人』での印象的な台詞「断食せずにはいられなかっただけのこと。ほかに仕様がなかったもんでね」(池内紀 訳)なる言葉への、クッツェーの回答でもあるような気がします。

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そして史上初二度目のブッカ―賞受賞作である『恥辱』にも、カフカ『審判』を暗示するような言葉で締められる印象的な章があり。

未読の方は、合わせて読むとなおのこと良いのでは。

彼の作品の中にあるのは、欧米諸国の先進地域によって生み出されたあまりにも完成されたポストモダニズムの中には無い、人間の個のありようではないでしょうか。それは共同体と個体との狭間で、あくまでも肉体的にもがき生きようとする人間そのものの姿であるとも言えるような気がします。

―「俺は眠ってる最中に起こされた」「眠っているときは食いものはいらない」
(『マイケルK』文中より引用)

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