March 18, 2009
【BOOK】コーヒーをつぎ、タバコに火をつけたら、あとはぼくについてすべてを忘れてくれ。
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「長いお別れ」・・・ある世代の読書家にとっては、まさに特別の存在である。
一般にはハードボイルド小説の代表作といわれるが、そのような枠組みには収まりきらないアメリカの、20世紀を代表するダイアモンドのような「小説」である。
私立探偵が出ているから探偵小説だ、と言われればそれはそうであろう。しかし・・しかしである。これはすべての人に共通する普遍的な感情を扱った出逢いと分かれ、諦観と矜持の物語でもある。ここにストーリーについては書かない。1940年代、いやしき街、ロスアンジェルスを行く孤高の騎士、フィリップ・マーローにしびれて欲しい。冒頭のマーローとレノックスの出逢いの場面からして素晴らしい!
本書は名ゼリフの宝庫でもある。本ブログのタイトルの一文もそうである。「ギムレットには早すぎる」「さよならをいうのは少しのあいだ死ぬことだ」などなど・・
村上春樹の訳だから・・・。理由はなんでもよい。この本を、そしてすべてのチャンドラーの著作をぜひ読んでもらいたい。以前から出ている清水俊二の翻訳と読みくらべてみるのもよい。あっと驚くラスト、スピード感、涙・・などとは無縁なあくまでも乾いた、ひんやりしたテイストにぜひ酔って欲しい。人によっては「何も起こらない」と見えるかもしれないが、長く、長く心に残る1冊。
「長いお別れ」にさよならを言う方法はまだ見つかっていない・・
(本書を読んだ方にはこの意味がわかるはず・・・)
早川書房「ロング・グッドバイ」 レイモンド・チャンドラー作 村上春樹訳
\1470 ハードカバー版 ¥2000
追記 クーリエ・ジャポン4月号にはイスラエルで行われた エルサレム(文学)賞のスピーチ全文を日本語と英語で完全収録。
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